■美術教師 敦 賀 蓮
人気のない、第二校舎の端、夏休み中の美術準備室に…
――――――ひっそりと淫靡な雰囲気が蟠る。
カーテンを閉め切った、薄暗い室内の、大きな作業用の台の上に…
全裸の少女が四肢をひろげたかたちで縛り付けられていた。
「……せんせい…っ、どうして――――――――――」
少女は泣きはらした顔で、羞恥に体じゅうを赤く染めながら、喘ぐように言った。
傍らに立って、少女のあられもない姿を見下ろしていた彼は、うっそりと微笑んだ。
「……最上が…裸婦のモデルなんかするからいけないんだよ」
少女は、唯一自由になる頭をいやいやをするように振って、しゃくりあげた。
夏休みのはじめに、割の良いアルバイトとして、美術専門校の裸婦デッサンの
モデルを引き受けた。
親のいない少女にとって、学費や食費、生活費を稼ぐための苦肉の策だったのだが、
それは驚くほど速やかに担任である美術教師に伝わった。
担任が、少女の通う私立高校と同系列であるその美術専門校の特別講師を
兼任していることを、少女は知らなかったのだ。
休暇中の学校に、電話で呼び出され、きついお小言をくらって…。
勧められるまま麦茶を飲んで、少し気が遠くなって、気付いたら、こんな…。
彼は、不揃いに伸びた髪をかきあげ、眼鏡を外した。
それを見上げていた少女がどきりと胸を弾ませる。
いつも絵の具で汚れた汚い白衣(作業衣?)を着て、
櫛が入っているのかどうか疑いたくなるざんばらな蓬髪と無精ひげを生やした担任は、
その本来の顔立ちを眼鏡の奥にかくしていることもあって、
級友たちからは残酷な容赦のなさでもって、酷い評価を与えられていた。
でも、少女だけは知っていた。
そうした、彼を装うだらしのない姿の奥に、とんでもない美貌が隠されていることを。
自分がなぜそれに気付いたのだったか…少し思い返してみる。
いつかの美術の時間に、生徒に作業をさせ、ぼんやりと外を眺める、担任の姿に気付いた。
午後の日の光に照らされた、その輪郭が、思いがけず整っていることに、少女は驚いた。
自分の不躾な視線に気付いていない彼が、無防備に眼鏡を外し… 目頭をつと揉んで。
その姿に、少女は呆然と見とれた。
思わず鉛筆をとりおとしたのに、担任が眼鏡をかけなおしながら振り返り…。
目が合って、暫時。
少女が顔を赤くして横を向いた後も、教師は少女の様子をじっと見つめ続けた。
「 ……どうしたの、最上 」
上からかぶさってくる声に、少女が我に帰る。
よく見たら、今日の彼は、髭をあたって、黒髪もつややかで。
はじめてはっきりと、その本性をあからさまにして、そして。
( ああ、いやだ…… いや )
少女はかたく目を閉じた。
こんな異常事態に、担任の容貌に気をとられてしまうなんて。
元々、級友たちの酷評とは別に、少女は担任に憧れていた。
彼の絵の繊細な美しさが大好きで。
自分で描くのは本当はさして好きでもないのに、美術部に入ったのも、
彼の絵の傍近くに接する機会が増えるからだった。
ぎゃあぎゃあとうるさい授業中も、少女だけは真剣に担任の話を聞いた。
はじめは憧れで……ほんの少し、恋の萌芽があって。
そして……いま、こんな。
「 ………最上……?」
やさしいといって良いほどの声音に、少女は頬を真っ赤に染めたまま、
ポロポロと大粒の涙を零した。
「 せんせい……ごめんなさい、もうしません…だから」
( …ゆるして、ください………)
うっすらを目をあけて、担任をうかがう。彼は、貼り付けた様な笑顔を浮かべていた。
「 ………でも、もう…してしまっただろう?」
息がふれるほど近くに覗き込まれて。
「 …簡単に、お金を稼ぐことを考えてはいけない。それには相応のリスクがあることを知りなさい」
「 君の裸をデッサンをしながら、ふらちな一部の男子学生たちがどんなことを考えていたか…。
美術系の学生でないものが、君の描かれたそれを見た時どう感じるか、今からじっくり教えてあげる」
少女は、酷薄にきらめく教師の目を見て、震え上がった。
「 いやです、先生――――――――!!!」
「 いやはない 」
担任は、言いざま、少女の顎をおさえて、深くくちづけた。
( !!!!!!! )
噛み付くように。やさしくあやすように、柔らかな唇が…重なって。
頭を逸らそうとあがいても、押さえ込まれた体は微動だにしない。
少女は担任の唇の下で、泣き声をあげた。
その隙を捕まえて、担任の舌が少女の口内に押し入り、縦横に蠢く。
無理矢理に絡められた舌をきつく吸われて、少女は息を詰まらせた。
どれだけの時間、そうされていたか…。
離された時は、少女の体からぐったりと力が抜けた。
台の上に腰掛けた担任が、ふう、と満足そうな息をつき、手の甲で口をぬぐう。
その男くさい仕種に心を痛めて、少女はまた少し泣き…しゃくりあげながら、きれぎれに抗議した。
( どうして、こんな、ひどいことを―――――いたずらや、おしおきでなんて、そんな残酷な事を)
少女自身はっきりと意識しないまま、好もしい、と思っていた男性に、
戯れにせよ求められて、体が勝手に反応してしまうのに、
彼女は消えてしまいたいほどの羞恥を覚えた。
相手には、知られたくない。 くちづけられただけで、自分の体に起こった現象を。
縛られて、隠す術のないそこが…痺れるように熱を持ってしまったことを。
少女の祈るような思いを嘲笑うかのように、担任の視線が少女の裸体を眺め回し、一点で止まった。
少女は、その視線を避けたくて、無理とわかっていながら膝をなんとか寄せようとあがいた。
食い入るように見つめられる焼けるような視線の熱さ。
無言のままの彼の―――――――圧迫感。
「 ……せ…んせい …っ 」
かすれ声で哀願するように彼を呼ぶと、担任はふと視線を落として、
無言のまま腰掛けていた台の上から降りた。
そのまま、画材のラック前に立ち、そこに並べたいくつもの筆立てから、二、三の絵筆を掴む。
次に彼は、引き出しをあけて、水彩絵の具を取り出した。
何をされるのかと怯えた少女をふりかえり、微笑む。
「 最上の肌は白くて綺麗だ。いい画布になりそうだよ… 」
華やかな微笑の中、目だけが笑っていないことに…少女は気付いて、擦れた悲鳴をあげた。
***
何色もの絵の具が、からだの上に落ちてくる。
ひやりとした冷たい感触に、その都度、少女の体がこわばった。
そして彼女は、自分の体の下にビニールシートが敷かれている事の意味を悟った。
この人は、最初から、こうするつもりで…。
漠然とした恐れと、意図のわからない混乱。
水入れで筆を洗いながら、担任はその大きな平筆で、少女の体におとした絵の具を塗り広げた。
( あっ……―――――――!!!)
びくり、と少女の体が反る。
首筋から、胸に。 腹を撫でたまま、わき腹をくすぐって…。
彼女は、自分でも気付かない甘い声をあげて、身をよじった。
くすぐったい。
担任の手は、容赦なく蠢き、少女の白い体に混色のカオスを描き印していく。
…どこが少女にとっての弱点なのか、その反応で見抜いて…そこには赤を。
「 いや、―――――――――もういや、いやです……」
言葉に反して、声はたとえようもなく甘かった。
一通りの色塗りが済んで、平筆を水入れに突っ込むと、
担任は流れるような動作で、中筆を取り出した。
絵の具のねっとりした感触に、快感を増長させられて、弱点を探られたキョーコが
ただの悲鳴ではない反応を見せる。
乳房まわりから、その先端の突起を執拗にいたぶられて、
そこと…そこではない別の場所がじんじんと痺れた。
あふれる官能に、少女の頭の奥が白く滲む。
臍をくすぐられて、絵筆が少女のかすかなあわいをかすめると、少女はあきらかな嬌声をあげた。
「 ……いくらなんでも、ここに絵の具は塗れないな…… 」
クスクスと笑う男の声。
首筋を、乳首を、わき腹を、筆が撫でる。
くりかえされるそれに、少女の自制心が少しづつ削り取られていった。
細い腰が…淫らに、僅かに、よじりあわされるように蠢く。
開かれた四肢に、少女の願いは叶わないまま。
ほんとうにほしいところには、塗れない…と、男は言った。
では、こんな…生殺しのような快感が……続くのだろうか?
どのくらい?
「 ……どうしたの、最上……?」
弱いところをくすぐりながら、意地悪な男が。
「………ああ――――――――――随分、ひどいことになってるね………」
艶かしく笑う声。
自分のそこを覗き込んで…。
「 お口を開けてしまってるじゃないか…こんな、ひくひくさせて…いやらしいなぁ…」
誰がしたのだと…こんなひどいことを。
はじめてなのに…こんな、いやらしいことを。
キョーコは快感と羞恥のあまり、しゃくりあげた。
「 イヤ…… せんせ…なん――――て―――――キライ… だいきらい…… 」
「 嫌いな男に、こんなに濡れちゃったの? 」
いつのまにとりかえたのか、真新しい細筆でそこをそっと撫でられて、
キョーコの細腰が激甚な反応を見せた。
それだけで、絶頂をむかえてしまいそうな、激しい快感。
愛液をたっぷりと筆先に受けて、花芯に円を描くように撫でる男の繊細な筆使い。
キョーコは意識せず、甘すぎる声でよがり、喘いだ。
少女はあずかり知らぬことながら、素直な体が口をあけて、淫らな愛液を噴き零した。
その、恐ろしいほどの蠱惑に、少女に気付かれないまま、蓮の目がぎらぎらと光った。
「 嫌いな男に、イカされちゃうんだ……?」
待ち焦がれていた愛撫にがくがくと体を震わせて、キョーコが泣く。
もっと、もっとほしい……強く…そこを
( 擦って………ほしい )
「 ねえ…最上? 嫌いな男に、いまから犯されちゃうんだね…?」
花芯を細筆でかすかに弄り倒しながら、男の指が入り口を弄った。
( え……あ――――――――――― )
犯す……。犯される。
先生に、いまから。
ふと、足首の戒めがとかれ、自由になった。
担任はキョーコの脚を大きく掬い上げ、抱え、濡れそぼって尻まで愛液を滴らせた秘所を
キョーコ自身に晒す様にして、恥らう少女を愉しんだ。
彼は、少女と視線を絡み合わせたまま…淫靡な空気の中で、流し目をくれながら、
舌を出して…花芯を舐めるふりをした。
びくり、と体が跳ねるのに、意地悪く嗤う。
「 嫌いな男に、舐められていいの……? 」
少女は、また、泣いた。
「 ひどい……です―――――― い、いじわる………っ 」
知ってるくせに。
少女が、いかに初心でも、好きでもない男にこうされて、こんなふうになる女だとは、
思ってもいないくせに。
「 ねえ…最上? 俺のこと……嫌いなの? 」
嫌いです、と言いたかった。こんなことをされて、好きだなんて…。
でも、じっと見つめる担任の目は、とても真摯で…。
少女は思わず、甘えるように、首を横にちいさく振った。
彼は、満足そうに笑った。
「 それじゃあ、わからないよ…ちゃんと、言って―――――」
そのくせ、なおも食い下がる。その間、愛撫の手は止まらない。
少女は泣きながら、せんせいのこと、ずっとすきでした――――と切れ切れに言わされた。
「 知ってたよ 」
幼い少女の、多分意識しないうちに芽生えていたのであろう
自分への淡い好意なんかとっくに気付いていた。
思春期の少女たちに騒がれるのも必要以上に懐かれるのも、
一過性の熱病のような恋愛ごっこにつきあわされるのも、
またその容貌ゆえに好意を裏返したような反発を受けるのもうっとおしいので、
わざと嫌悪感を抱かせるようなだらしのない格好をはじめてから随分経つ。
最初は容貌に関わらず、自分に懐いてくる少女にうろんな気持ちを抱いた彼だったが、
その裏表のない礼儀正しい態度に自分への真摯な尊敬を感じて、いまどき珍しい子だと、
いつしか好感を抱くまでになった。
しかし、それははじめは師弟愛のはずだった…。
うっかりと素顔を垣間見せて、少女の自分への態度が一時ぎこちなくなった。
ああ、これはまた…うっとおしい状態を生んでしまうだろうかと危惧していた彼に、
しかし少女はあくまでも態度を変えなかった。
尊敬する師への憧れ。
決して馴れ馴れしくも、甘えすぎもしない、一線を引いた向こうに礼儀正しく存在する少女。
拍子抜けし、なんとなく寂しくも感じ…。
けれど、少女の中に芽生えた自分への異性としての興味にも気付いて。
なのに、そこから頑としてでてこようとはしない少女にいつしか焦れて。
彼は、自分が師の範囲を超えて少女を見つめているのに気付いた。
そこに、裸婦デッサンのモデルの話が舞い込んだのだった。
頭に血が上った。
どうしてくれよう、と思った。
自分がこんなに焦れているのに、他の男に平気で肌を晒して。
………目の前が赤く滲むような、それが激しい嫉妬だと気付いて、彼は……。
「 でも……過去形なの…?」
吐息を吹きかけるように淫らに振舞って、細腰が震えるのを確認して、
彼は少女を甘く睨みつけた。
「 俺は、こんなにも、最上が好きなのに………? 」
驚愕に目をおおきくみひらく少女を見つめたまま、舌をそこに這わせる。
少女は、その淫らな眺めに胸を衝かれながら、驚きと官能に同時に襲われたらしく、
わけのわからない淫らな声をあげた。
「 裸婦なんかして……俺のものなのに。――――――――― 絶対許さないからね 」
(そ、それって、それって、どういう… ――――――――)
与えられる舌技による快感に翻弄されながら、キョーコは混乱の窮みに達して悲鳴を上げた。
快感なのか、恐怖なのか…悦びなのか、自分のなかで、判然としないまま。
***
「 ……せんせ…――、――――――いた……いたいです――――――――――」
初めての絶頂を迎えて、甘い痙攣を繰り返して呆然としていたキョーコに、蓮は圧しかかった。
半ば乾いてしまった、キョーコに塗りたくった絵の具が白衣とシャツを汚すのも構わずに。
少女は、せまい体に押し入ってこようとする大きな質量に、先ほどまでの快感とは全く違った、
恐怖と痛みを感じて、よわよわしく担任にすがった。
「 痛くていい。反省しなさい 」
少女の片足を抱え上げて、切ないほどいきり立った自分自身を濡れそぼった秘所にあてがい、
彼は荒い息で冷たく言った。
言葉に反して、挿入は手心を加えて行っている。
はじめての体に、可能な限りは苦痛が少ないように…やさしく、愛撫を加えながら。
それでも、先の部分が入ってしまうと、彼の頭も快感でぶれた。
ぎゅっと目を閉じて、唇をかみしめ、一生懸命に耐えている少女の姿を見ると、
愛おしくてやさしくしたい気持ちと同時に、荒々しく犯したい気持ちが湧いてくる。
「 ………最上、目をあけて……」
瞼にくちづけをすると、少女はふるえながら、うっすらと目をあけた。
もう、半ば以上は自分のものになった、この可愛い存在を。
「 愛してるんだけど……我慢できそうにないんだ、少し、きついかもしれない…ごめんね?」
( こんな、余裕がないセックスなんてはじめてだよ… )
少女は、わずかに逡巡し、やがて頬をそめたまま、こくり、とうなづいた。
彼は、許可をもらった男の大胆さで、深くくちづけながら、
かたい抵抗を見せる少女の体内に己の昂ぶりを容赦なく根元まで突き入れた。
体の下で、破瓜の激痛に少女が身をこわばらせ、悲鳴が彼の唇の下にくぐもった。
少女の体内の蠢動と、熱………。濡れそぼった刺激に酔わされるように、彼は夢中で腰を使った。
そのたびに、少女が鋭い悲鳴をあげて、背を反らすのを無理矢理抱き締めて。
( せんせ…っ、せんせ―――――――いや、無理、しんじゃう…いたい―――――――――いたいです……)
きれぎれの哀願を、心地良く聞いている自分に気付き、彼はそっと嗤った。
( ……俺は……どうやら、ドS らしい――――――――――――)
「 最上……反省してる……? 」
覗き込むと、目にいっぱいためた涙を噴き零しながら、少女はこくこくとうなづいた。
「 信じられないな……… 」
ゆっくりと抽送を繰り返しながら…少女が痛みに眉を顰めるのをうっとりと眺めながら。
「 しんじ…て、先生、もうしない…から……――――だから、」
( 抜いて下さい………)
「 駄目 」
こんな気持ちのいい状態で、終われるわけがない。
彼が小刻みに揺さぶると、少女の喘ぎがブレた。
「 でも…そうだね……許してあげてもいい。今夜から、君が俺のところにくるのなら… 」
一人暮らしの、少女。いっそ、攫ってしまおうか。
―――――――彼は圧倒的な誘惑にうっとりとする。
勿論、色々とクリアするべき難題はあるだろう…それでも。
「 ねえ…最上。先生のところで、一緒に暮らさない? 」
覗き込むと、怯えた潤んだ瞳で、自分を見つめる。
それを眺めて…じんわりと胸に快感を点していると、彼は自分が悪魔になったような気がした。
「 でないと…終わってあげないよ……?」
淫らに出し入れを繰り返すと、少女は哀願した。
「 行きます…せんせいのところ――――――――だからやめ――――――――――っ 」
犯されるこの子がこんなに淫らで、欲情を駆り立てるなんて…。
純粋に生徒として見つめていた時には、思いもよらなかった。
「 約束だからね…、破ったら…もっとひどいよ…? 」
彼が抽送を止めると、少女はほっとしたように体から力を抜いた。
それを見計らうように、蓮はぐい、と体を押し付ける。
「 …じゃあ、イッてあげるから……」
てっきり、抜いてもらえると思った少女は、悲壮な顔をして担任を見上げた。
そのまま、何かにのまれた様に、視線が男に釘付けになる。
少女の瞳が潤びて、頬が薔薇色に染まった。
じぶんに耽る先生の、その美貌の、壮絶な悩ましさ。
少女は、痛みをこらえながら、彼のその様子を、
閉じたがる目をできるだけひらいて見つめた。
彼と、セックスをしているのだ…と。
激しくゆさぶられて、知らず漏れた声が跳ねる。
どうしようもなく彼に欲情してしまった自分には気付かずに、
少女は絶頂を迎えた男の激しさを思い知らされ、強く抱き締められながら、
体内に染みていく男の熱に、しばし、呆然とした…。
***
「……せんせい―――――――なかで、だしました……?」
腕のいましめを解かれたあと、少女は痛む体をゆっくり横にして、彼に背を向けた。
担任は濡れたタオルを用意して、あたりまえのように少女の体を仰向かせ、
両足をひらかせて、そこをやさしくぬぐった。
抵抗する気持ちも萎えるほど………丁寧に。
担任の欲望の果てと、少女の破瓜の出血がタオルに染みる。
「 うん…? 出したよ 」
悪びれもせず言う男に、泣きたくなる。
少女自体には乏しい知識しかなくても、友人たちとの会話の中では、
その女を本当に大切に思っている男なら、
妊娠の可能性に繋がるようなことはしない、
つまり、中で出すことはありえないのだという事を聞き知っていた。
少女は、少し、泣いた。
切なくて。
「 …………俺は、最上を手放す気はないからね 」
そんな少女の様子を知ってか知らずか、彼は機嫌良く言う。
肩にそっと、大きな手が添えられて。撫でられて。
「 だから、最上とする時は……外には出さない 」
少女は、驚いたように担任を見つめた。
驚くほど澄んだ、真摯な瞳が自分を見つめていた。
「 ……そんな事言って…わたしが、いやだって言ったら…どうするんですか…―――――」
乾いた喉に、からむような声音で、思わず聞いてしまう。
「 嫌なの………?」
上から、覗き込まれて。
少女が、ぎゅっと力なく睨むと、男は人の悪い笑みを浮かべてそれを受けた。
「 ………だったら俺は、また犯罪を繰り返さないと。 最上を拉致して、監禁して、調教して…
嫌なんて言えない様にしなくちゃならないな……」
その言葉に、びくん、と体を震わすと、蓮は口の中で笑った。
「 ………ほんと、ドMなんだから………」
「 ……なっ、……ちが―――――――――!」
体の震えを違う意味にとられて、キョーコが胸を押さえて起き上がる。
硬い台の上で交わした行為と、不自然な姿勢を長時間とらされていたのに、全身が痛んだ。
思わずうめいて、体を折る。
蓮は、少女の体を抱き寄せて、やわらかく抱き締めた。
「 ………無茶をして、ごめんね……?」
( ほんとうです……っ )
頭の中で、毒を吐きつつ、その腕の中のぬくもりに、陶然となる。
そんな自分にも驚きながら、少女は担任を見上げて…降りてくる唇に身をまかせた。
「 …俺の家に、行こうか………この体、シャワーも浴びさせてあげないとね……」
耳元で囁かれて、はっと我に返る。
「 約束――――――――――――――」
人差し指をたてて、唇にあてがわれる。
とはいえ、このままその未知なる領域に伴われれば、冗談に聞こえなかった先ほどの言葉
…拉致監禁調教のフルコース…が、待っているようないないような…。
情けない顔をして担任を見上げると、彼は余裕の笑顔を浮かべていた。
ただ、その目だけが、キラリと不埒に光る。
「 嫌だったら、ここで続きをもっと色々してもいいんだけど。 …どうせ、夏休み中だしね。」
それは、それだけは。
キョーコは、これが、いわゆるひとつの、“前門の虎、後門の狼”というやつか…と
己の追い込まれた状況に歯噛みしたい気持ちになりながら、
蓮に促されるまま、彼が周到に用意してきた服に着替え…。
悪魔に伴われて、二度とは帰れない道とゆっくり踏み出した。