■番外2 :オファーにさよなら
■ キョコ視点
「………っていうような映画のオファーが蓮と最上さん二人に
来ているわけなんだけど、どうだい?」
朝、椹さんに呼ばれてLMEのタレント部に顔を出すと、
彼は嬉しそうに企画書(?)を差し出して言った。
お仕事がもらえる……!!しかも、映画…(主演!?)!!と、喜びもつかのま。
私は “ソレ” を一読して…… ぱたりと閉じた。
涙が溢れそう………(いろんな意味で)
「でもさ…これって、新開監督じきじきのオファーなんだよ?社長まで通して。
最上さんも成長したよなあ…って喜んでたんだけどなぁ…」
騙されません、そんなこと言ってフタをあけたらきっとまた影絵とかで。
……それにしても最近、敦賀さんとの妙にエロくさい出演へのオファーが
激増しているのは、一体どういうわけなんだろう。
しかも。
「しかもこの役名って……なんですか。
敦賀さんも私もそのまんまじゃないですか。
こんなの無理です。絶対無理」
敦賀さんを「蓮」呼ばわりするなんて考えただけで血も凍る。(←どんだけ)
敦賀さんを蓮と呼び、敦賀さんにキョウコと呼ばれる、
そんな恋愛の演技なんて……。
考えただけで魂が成層圏の彼方までふっとんだっきり帰ってきません。アデュー。
ごめんなさい、もうほんと。
最上キョーコ、今回は、脱兎のごとく逃げます。
三十六計逃げるに如かずです。
***
■ 社氏視点(〜蓮の場合)
その頃、蓮はもらった企画書を手に悶絶していた。
口の中でぶつぶつと、どのルートからばれたんだ、緒方監督か、黒崎監督か、
黒崎といえばあれか、あれを見られてしまったのか、と熱にうかされたように
わけのわからないことをつぶやいている。
「…俺もみせてもらったけど、その企画、なかなか面白いんじゃない?」
斬新で。たしかこういう時代幻想系の役どころは蓮にはあまり経験がないはずだ。
役の幅も広がりそうだし、なによりも姫がキョーコちゃんなら、
ある意味役得でもあるわけで。
しかし、蓮は、俺が横から口を挟むと、すごい顔をして固まったまま、こちらを見た。
目を離さずに、ざりざりと、壁に肩をすりつけながら、後ずさっていく。
「 れ、蓮――――――――――――?」
な、なんか悪い事言ったかな。
「 社長には見せないで下さい、それ 」
………っても、企画自体が 監督 ⇒ 社長 ⇒ (蓮)俺 に
降りてきたわけで…。
事実上社内的にはGOサインが出てるわけで。
「 って、お前、これ、受けないわけ…???」
「 無理ですから 」
ってお前、そんなキッパリ!!!!!
ありえない、仕事の鬼の敦賀蓮が、俺が調整のために切る仕事でさえ
入れたがる蓮が。
驚愕する俺に、蓮はじゃあそういうことでお願いします、と清々しく言い放ち、
ざりざりとフェードアウトしていった。
(こんな実生活の状況と妙にシンクロした役なんかやったら
決壊どころの騒ぎじゃない―――――――――――)
かすかな呟きが、聞こえたような…聞こえないような。
【トゥルーエンド】